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 【エンジン】 ガソリンエンジンの理解ためのポイント&アトキンソンのカラクリ
続き…
(今回は少し難しいですが、よろしくお願いします)

アトキンソンサイクルにしろ、通常のエンジン(オットーサイクル)にしろ、ガソリンエンジンを理解するうえで抑えておくべきポイントがあります。
それは
理論空燃比ノッキングです。

ガソリンエンジンは 空気と燃料をあらかじめ混合させて、
混合気を吸入・圧縮して、スパークプラグの火花で点火、燃焼させていますね。

この空気と燃料のバランス・比率を
空燃比(A/F比)といいます。
R-VitでA/F1として計測できますが、だいたい14.4〜14.6辺りの数値ではないでしょうか。
実際のベストバランスは決まっていて、理論空燃比と言います。値は14.7です。

▼ここから少しだけ化学の話…
ガソリンは炭素(C)、水素(H)の化合物です。
燃焼すれば、酸素と結びつきCO2とH20になります。
ただし、空気(酸素)が過剰だと、窒素(N2)と結びつき有害なNOxが発生します。
また、酸素が不足していると、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)という有害物質が発生します。
ですから、ちょうどよい酸素の量(理論空燃比)が必要なんです。
実際は、燃焼の過程でNOxもCOもHCもできてしまうのですが、
エンジン後の三元触媒にて、NOxの還元とCO、HCの酸化を行い、排ガスを浄化します。
三元触媒が浄化能力を発揮するには、触媒が高温になる必要があるので、始動時のエンジン暖機運転(点火時期遅角制御の期間)はやむをえないのです。
ガソリンエンジンの強みは、理論空燃比を守ることで、三元触媒で排ガスをとてもクリーンにできる点です。
(ディーゼルはここが苦手)

◆高効率なエンジンのために…
さて、ガソリンエンジンで理論空燃比はお約束と思ってください。
(リーンバーンという例外がありますが、これについてはだいぶ先で触れる予定です)

で、理論空燃比で燃焼した高圧ガスから、できるだけ多くのエネルギーを取り出したいと考えます。
(トータルの発生熱量はすでに決まっています)
ピストンエンジンでは燃焼した高圧ガスがピストンを押し下げることで、熱エネルギーを力として取り出しています。

さて、どうすればより多くのエネルギーを取り出せるでしょう…



1つの方法は、
燃焼ガスにできるだけ下までピストンを押し下げさせることです。
燃焼ガスがまだエネルギーをもっているのに、途中でピストンの下降をとめて、燃焼ガスを排出(排気)しちゃうのはもったいないですよね。

この考え方がアトキンソンサイクルです。
アトキンソンサイクルでは、燃焼ガスが13.5倍の大きさに膨らむまで、エネルギーとして有効活用しています。

一方、ほとんどのガソリンエンジンでは、10〜11倍に膨らんだところで、もう排ガスとして捨ててしまいます。
もったいないですね。
これがアトキンソンサイクルが高膨張比エンジンといわれる由縁です。


では、もっと高効率にするために、もっと膨張比を大きく取ればいいじゃないかという意見もあるかと思います。
実はピストンエンジンではそれが難しいのです。


なぜ普通のガソリンエンジンで10倍〜11倍に燃焼ガスが膨らんだところで、排ガスとして捨ててしまっているかというと、同じ比率で、ピストンの上昇行程において吸い込んだ混合気を圧縮しているからです。
(膨張比=圧縮比=10〜11)

なぜ、これ以上の圧縮ができないかというと、
それ以上に理論空燃比の混合気を圧縮すると、ノッキング(自己発火)が発生してしまうからです。

▼ノッキング(自己発火)は恐ろしい…
ノッキングはスパークプラグで点火される前に、圧縮された高圧混合気が、勝手に発火してしまうことです。微小な爆発といっていいでしょう。これ、エンジンにとっては厳禁!
ノッキングがちょっと長く続くと、音速を超えた衝撃波によりピストン等が破壊されます。
実際のエンジンでは、衝撃を観測するノックセンサで、ノッキング発生と同時に、
燃料噴射をカットします。点火時期を遅めに補正します


ということで、普通のエンジンではノッキングを避けるために、圧縮比を限界の10〜11にしています。そのため、燃焼ガスが10〜11倍に膨張するまでしかエネルギーとして利用できません。

一方、アトキンソンサイクルはどうやってノッキングを避けているのか…(とても13.5倍の圧縮なんてできません)

アトキンソンサイクルでは、圧縮をピストンの上昇の途中からしか行いません。吸気バルブが閉まるのを遅めにして、ピストンが上昇しても、そのまんま一旦吸い込んだ混合気を吐き戻しているのですね。

こうすることで、
1000ccだけ混合気を吸い込んで、1500cc分の仕事をさせる(1500cc相当のエネルギーを回収する)ということができます。これがアトキンソンサイクルのカラクリです。


こうやってアトキンソンサイクルを賛美すると、なぜもっと普及しないの?という疑問が沸くでしょう。
アトキンソンサイクルには致命的な欠点があります。
それは、発揮できるパワーが少ないこと。
(膨張比は10→13.5と35%増しになりますが、実際膨張中の燃焼ガスの温度低下等により取り出せるエネルギーはこの割合よりも小さくなります)
そのため、ターボ等で過給するか、モーター等と動力混合することが望ましいのです。
(THSでは、動力分割機構により、さらにエンジンの都合のより領域での動作としています)

ということで、今回のおさらい
・アトキンソンサイクルは膨張比を大きくし、
 1000cc分吸い込んで1500cc分の仕事をさせることで、
 効率を高めている
・その反面、エンジンの割りにパワーが小さく、
 駆動力に用いる場合、何らかの補助が望ましい
・ガソリンを燃料とする以上、理論空燃比とノッキングの制約はついてまわる


特に3点目は、ポンピングロスを考えるのに必要になります。

いやぁ、長文になりましたね(^^
▼ この記事へのコメント ▼
ありがとうございました。

例えば圧縮比11以上はハイオク仕様が多いです。
クラウンの2.5Lが12.0で当然ハイオク。

ターボのような過給機付きのクルマは、過給により圧力が上がりますので圧縮比が低くてもハイオク。
(新型インプレッサ2.0ターボで9.4)

ところがプリウスは、13.5にもかかわらずレギュラーなのです。
財布にも優しいのは大助かり。
いつもながらよくわかる解説、ありがとうございます。m(__)m
アトキンソンって言葉は知っていても、どういう理屈なのかまでは全く知らなかったので。(^^ゞ
それにしてもプリウスってのは遊星歯車といい、アトキンソンエンジンとモーターの組み合わせといい、良いポイントをついて設計されているんですねェ。
>実際のエンジンでは、衝撃を観測するノックセンサで、ノッキング発生と同時に、燃料噴射をカットします。

ノッキング発生と同時に点火時期を遅角制御していると思ってました。
よく判る解説、ありがとうございます
昔は鉛を入れてオクタン価をあげたハイオクがありましたねぇ
さん、こんばんは。

あっ、すいません。
ノッキング対策は、点火時期の遅角制御が正しいです(^^;
過回転時と間違えました。
訂正しておきます。
さん、皆さん、こんばんは。
> 例えば圧縮比11以上はハイオク仕様が多いです。
> クラウンの2.5Lが12.0で当然ハイオク。
---------------
ノッキングを防ぐ方法のひとつとして、燃料の
オクタン価を上げる(ハイオク仕様)という方法があります。

これであれば、オットーサイクルのまま
圧縮比をわずかに引き上げ、その分、出力を上げることができます。

ですからハイオク仕様にレギュラーを入れることは、
ノッキングを誘発し、エンジンには厳禁ですが、
逆にレギュラー仕様にハイオクを入れても、特に効果はないのですね。
(対ノッキング性能だけが上がっても効率には効果なし。
 ハイオクとレギュラーでも基本的な発生熱量は差がないですし、
 添加剤の配合が異なる分のわずかな影響がある程度?)

> プリウスは、13.5にもかかわらずレギュラーなのです。
-----------------
圧縮比はオットーサイクルを基本として、
膨張比=圧縮比として書かれてしまいますからね・・・。
実際の圧縮比は13.5もないのですが、表記上、仕方ないのかな。
>ハイオクとレギュラーでも基本的な発生熱量は差がないですし

プリウスにハイオクをご馳走しても、まったく燃費改善はありませんでした。理屈がわかりました。
さん

でもプリは、しっかり学習してますよ。
さん
ハイオク給油すると何か学習機能が働くんですか?
良い学習ならハイオク入れてみようかな...
ちょ〜良くわかりました〜。解説ありがとうです。
じゃあハイオクがダメってことは
オクタンブースター系の添加剤もあんまり意味なしなのかな〜?
さん

“進角グセ”が、つきます。

ハイオクからレギュラーに戻すと
ノッキングします。

ちなみに我輩は何ヶ月もハイオク〜♪
アトキンソンサイクルのエンジン、まもなく
興味深いエンジンが世に出るようです。

マツダの新型デミオ(7月発売予定)に搭載される
1.3Lのエンジンがミラーサイクル(トヨタではアトキンソンサイクルと呼称)を採用するようです。
特にターボやスーパーチャージャーは使用せず、モーターアシストもなし…、完全な自然吸気のミラーサイクル。
http://www.mazda.co.jp/corporate/publicity/release/2007/200705/070531.html

どうやって実用域のトルク低下を防いだのかが気になります。

100kg近い車両の軽量化と、CVTの採用もあって、
従来比20%の燃費性能の向上(23km/L)だそうです。

マツダとして14年ぶりのミラーサイクルエンジンの復活、楽しみです。
◆良参考書
Motor Fan Illustlated Vol.10
で最新のエンジン技術として、
・デミオのアトキンソンサイクル(プリウスの1NZ-FXEとの比較)
・トヨタのバルブマチック等、スロットルレス機構
・BMW+PSAの新型直4エンジン
が解説されています・・・
興味がありましたら、是非どうぞ・・・