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 プリウスのピストンリング
まず、新潟中越沖地震の被災者の方に、お見舞い申し上げます。

さて、7/20の朝日新聞朝刊 1面で
「被災したリケンが、エンジン部品(ピストンリング)を全量供給していたのはプリウス」
との記事がありました。

プリウスのピストンリングはそれほどまでに特殊なのかというと、やはり低燃費を狙った特別なもののようです。

ピストンリング自体については、
被災されたリケンのHPの「ピストンリング博物館」が本当に詳しいですね。図説も充実しています。
http://www.riken.co.jp/piston/b/b_1.html

ですから、上記HPであまり触れられていないことを中心に書きたいと思います。

◆ピストンリングの役割
ピストンリングはピストンとシリンダ(ライナー)の間に挟まり、
・気密性の確保
・オイル量のコントロール
・ピストン熱のシリンダ壁への熱伝導
などの役割を担います。


ピストンリングは、自身のばねの力でシリンダ壁に押し付けられています。
そのため、その部分で摩擦損失が発生します。

一般的なガソリンエンジンの場合で、全摩擦損失のうち、ピストン系の摩擦が22〜35%を占めます。そのうち、ピストンリングとシリンダ壁の摩擦は約60%を占めます。
つまり
エンジンの全摩擦損失の 13〜21%は、ピストンリング部で発生しています。

◆低張力の必要性
ですから、ピストンリングの進化の歴史は、そのまま低張力化の歴史でした。ピストンリングが押し付けられる力を小さくする。
3本のリングの合計張力を36%減らすと、2000rpm時の摩擦損失を2.9%低減できるとの記述があります
(トライポロジー ジャ−ナル 1994 vol27)

しかし、上記の役割はしっかり担う必要があります。
特に適切な油膜を形成するには、薄幅化も必要です。。
(油膜には適当な圧力が必要なので、低張力化するなら薄幅化も必要)

3本あるリングのうち、もっとも大きな摩擦損失を発生するのは、一番下のオイルリングです。

2000年以前ではオイルリングは3mm幅でしたが、プリウスのオイルリングは
1.5mm幅になっています。
同じ圧力ということであれば、単純には張力は50%低減で済みます。(実際は表面処理の違いで、単純には行きませんが)

またその構造も従来の3ピース構造から、2ピース構造になっています。(構造が単純な分、薄幅化しやすい、一方、加工精度はより高いものが要求される)

また、プリウスでは、トップリングに
世界初の0.8mm幅を用いています。これも2000年以前では1.2mm幅が主流でした。

ピストンリングがそれぞれ薄幅化できれば、その分ピストンの高さも抑えることができ、ピストン自体の軽量化にも効果があります。

というわけで、
直径 74mm、幅が0.8mm〜1.5mmのリングが、とても大切な役割を担っていたのですね。
(ちなみにリングの上下の面精度は1μm 以下です)

早く、リケンの生産ラインが復旧することを願っています。

▼ この記事へのコメント ▼
毎回勉強になります。
単純に燃焼ガスを漏らさず、オイルの油膜を作る程度と考えていたんですが、
予想以上に重要な部品なんですね。

トヨタの生産ラインが止まった影響でうちの工場も生産調整・ライン停止の措置がとられました。
自動車業界は孫会社に当たるねじメーカーがやられただけでも車が作れなくなる
とはよく聞きますが、今回は本当にそれを如実に反映していますよね。
一日も早い復旧を祈ってます。
プリウスのエンジンは最高回転数を低めに設定していますから、部品摩擦の低減を狙う事が可能となっているのでしょうね。

被災地とリケンの生産ラインが復旧し、納車を待つ皆さんのところへ一日も早くプリウスが届く事を願っております。
構造上、合口の隙間から漏れないのかな?と気になっていましたが、
上記のURLにてなるほどとと感心しました。

ということは、暖機が不十分な場合はオイル漏れなどが多いのかな?
>ちなみにリングの上下の面精度は1μm 以下です
面粗度のことでしょうか?
また、ピストンリングを薄くするための材質の変化及び加工方法についてご存知でしたら教えて下さい。
仕上げに窒化処理・PVD処理等の表面処理が施されているようですね。
シリンダーも同様ですけど、研磨技術や表面処理技術が相当手の込んだものなのでしょうね。

シリンダー内の温度変化は激しいですから、ピストンリングの材質の線膨張率も相当シビアなものでしょうね。
国内のピストンリングメーカーというとリケンの他に、
日本ピストンリング、帝国ピストンリングくらいしかありませんね。
専業メーカーが長年積み重ねた技術は素晴らしいものです。
さん
>> ちなみにリングの上下の面精度は1μm 以下です
> 面粗度のことでしょうか?
---------------------
そうですね。面粗度ですね。
製法としては、上下の面を同時に研磨して仕上げているそうです。
(構造の写真を追加しました)

構造の写真を見てもらえばわかるのですが、
非常に精度の高い仕上げが必要なのですね。
特に2ピース構造のオイルリングなんて、どうやって作っているのか不思議に思えるくらい複雑なんですね。

材質は、鋳鉄→スチール(マルテンサイト系ステンレス鋼)と変遷してきています。プリウスの場合、トップリングとオイルリングがステンレス鋼のようです。(新型車解説書より)

さんの書かれているように、各種表面処理が行なわれていますが、驚くところは、シリンダに接する外周面と、ピストンに接する上下側面は、異なる表面処理が行なわれているようです。
(ex.外周面がPVD(イオンプレーティング)、側面がリン酸塩皮膜)